これは、羽生ソアリングクラブの某Y会員が、高性能機JA2526に始めて搭乗した時の体験記です。

200X 年 5月吉日

今日は羽生ソアリングクラブの創立記念日。 久し振りに来られた会員さんのために地上で奉仕し続けよう、そう心に決めていた日だった。 「Nimbus 乗る人、いますか?」、監督者のKさんがそう呼びかける... 誰も名乗り出ない... そういえば、自分は Nimbus には乗ったことがないな... 「Nimbus乗りませんか?」...「私、乗りたいです」、固い決心をした私とは、別の私が勝手に口を動かしていた。

後席に搭乗するK教官とともに、監督者のKさんから主としてフラップの使い方と着陸時のブレーキングについて注意事項を聞く。 曳航機を待つ間、今度はK教官から注意事項を聞く。 ん?、自分は遊覧飛行のつもりでいたのだが、どうやらK教官は自分に操縦を任せる気でいるらしい。 改めて装置類をきちんと確認していく。 フラップ、ギヤの格納、慣れない装置にやや不安を感じる。

そしていよいよ出発、殆ど滑空場いっぱいに翼を広げる Nimbus、傾きと方向にいつも以上に気をつかいながら離陸する。 離陸、曳航の感触は、手馴れた機体と大きな違いはないようだ。 そして離脱、いつもより一段と静かな世界が訪れる。 間もなくポヨンポヨンとかわいい音がする。 Nimbusのオーディオバリオの音だ。 すぐに右旋回に入れる。 どうしても足が遅れる。 反面長い翼なのに、エルロンはとても感度がよい。 何とかプラス帯を捉える。 一旦旋回に入ってしまえば大きな違いはないようだ。

高度計の針が見る間に逆回転を始めている。 別のところを飛んでいた機体も2機、3機とわれわれの下に潜り込んで来た。 「いいぞ、いいぞ」、K教官の弾んだ声が聞こえる。 バシャッ、後席から異音がして、機内は更に静けさを増した。 「何の音ですか?」「ごめん、暑いから小窓を空けていた。」...離脱の時に感じた静かさは本物ではなかったのだ、これが本物の静かさだ。 これに比べるといつもの機体は騒音の中だ、エンジン機に乗っているにも等しい。

3,200 ft に到達し、板倉方面に向かう。 フラップをネガティブにセットして、160 km/h でかっとぶ。 姿勢があまり変らない。 音も静かなまま、そして高度もあまり変らない。 板倉に到着、失高は 500 ft、ん?そんなのありかという感じだ。 板倉付近で旋回中の板倉の ASK21 を見つけ上に入り込む。レーシングカーと教習車の勝負だ、負けられない。 腕の悪さは機体がカバーしてくれる、そう信じて回りつづける。 次第に高度差がついていく。 間もなくK教官がいう。 「ASK21 が逃げていった。」、K教官も燃えていたようだ。

3,000 ft 程度まで戻して、今度はみかも山まで進出し、辺りを探った。 こちらはあまり日射がなく、リフトも弱いという状況だ。 板倉方向に戻り始めると板倉上空にかなり黒い雲、そしてその雲の下、我々の遥か上空でグライダーが回っているのを発見、直ちに下に潜り込む。 案の定強いリフトに遭遇、ぐんぐん上がり始める。 下には板倉のディスカスが入り込んできた。今度はF1とF3の勝負だ、負けられない。 コアに切り込んで、きつめのバンクで回る、全周5ノットの上昇率。 ぐんぐん上の機体に迫っていく。 そしてディスカスに高度差をつけていく。 これで2機撃墜だ。 上の機体をよく見れば、板倉でクラブクラスに参加している後輩のKa-6だ。 彼も頑張っているようだ。

そして間もなく雲底、4,000ft、今度は葛生まで進出する。 ドルフィンであっという間に葛生に到着する。 「そろそろ1時間だよ」、K教官が声をかける。 そうだった、この機体はタクシーメーター制だった。 「戻ります。」、180度ターンをして羽生を目指す。 190 km/h で突進、結構沈下も大きく、板倉上空で 1,700 ft、いつもの機体ならこの辺りで高度獲得を図るところだ。 「このまま行ける」、K教官の声。 普段の感覚から抜けきれない私としては、なんともムズムズするパス角だが、計算からいくと楽勝のはずだ。 190 km/h でのファイナルグライドを続ける。 普段なら見ることのない低い高度での板倉〜羽生間の風景を眺めていると、お尻がムズムズしてくる。

そうこうするうちに羽生到着、500 ft、んー、結構ぎりぎりだったな。 そう思いながら 100 km/h までプルアップすると、あれまあ、なんと高度計が逆回転を始め、なんと 300 ft もゲインしてしまったではないか。 なんてことだ、Nimbus ではエネルギー保存の法則が成立していた。 そのままダイレクトベースから着陸に入る。 フラップセット、ギヤダウン確認、声をかけながら着陸準備の手続きを行う。 軸線を慎重に合わせながら、やがて接地、地上走行も慎重に行い、間もなく停止。 58分間、私にとっては初ものづくしの、大人のグライダーの世界を知ってしまった1発だった。


戻る   閉じる


Copyright (C) 2003 NPO法人 羽生ソアリングクラブ